わんちゃんの心臓病✤✤
わんちゃんの心臓病は「心疾患」とも呼ばれ、心臓がうまく働かなくなり、
身体にうまく血液を送ることが出来なくなる結果、わんちゃんの身体に様々な症状がでます。
わんちゃんの心臓病には様々な種類があります。
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
僧帽弁閉鎖不全症とは、高齢の小型犬に多い心臓疾患です。
僧帽弁とは、心臓の左心室と左心房の間に位置し、血液を送り出すため、開いたり閉じたりしている弁の事です。この弁が何らかの原因で、うまく閉じなくなり、血液が逆流してしまう状態を
「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」といいます。
<症状>
ほとんどの場合、初期段階では症状がありませんが、心臓の雑音はありますので予防接種や
健康診断など、動物病院で診察を受けた時の聴診で分かる場合が多いです。
進行が進み、中期になると、疲れやすくなったり、「ゼェーゼェー」と咳をします。
わんちゃんの咳は「カッカッガッー」や「ゴホッゴホッ」など、えづくような咳です。
水を飲んだ後や、興奮した時に出ることが多いですが、進行が進むと、安静にしている時にも
出るようになります。
さらに重傷になると、舌の色が紫色になる「チアノーゼ」や呼吸困難、お腹に水が溜まる
「腹水」や肺に水が溜まる「肺水腫」といった症状が出てきます。
<原因>
僧帽弁閉鎖不全症のはっきりした原因は分かっていません。
しかし、小型犬のシニア犬に多いとされています。
「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」は特に多いとされていて、
若いわんちゃんも発症する確率が高いと言われています。
<病院での治療>
僧帽弁閉鎖不全症は進行していく病気なので、定期的に超音波検査やX線検査をして
心臓の状態をみながら、基本的には「血管拡張薬」や「強心薬」などの内服薬を飲んでの
内科的治療になります。
「腹水」や「胸水」が溜まっているときは、利尿薬を使用します。
しかし、内服薬は症状を改善するためであって、病気そのものを治すわけでは無いため、
生涯お薬を飲み続けなければなりません。
フィラリア症
フィラリア症とは、わんちゃんが、フィラリアという寄生虫に感染している蚊に刺されることで
体内にフィラリアの幼虫が入り、繁殖して肺に血液を送る役割の「右心室」にある「肺動脈」に
寄生します。その結果、咳が出たり、腹水が溜まったりします。
<症状>
初期の段階では何の症状も無いか、軽い咳が出る程度です。
中期に入ると、散歩に行ってもすぐに疲れてしまったり、時々、咳をしたりします。
さらに進むと、軽い散歩や運動でも疲れやすくなり、持続的な咳が出始めます。
呼吸困難を起こす子もいます。
そして末期になると、非常に多くの寄生虫がいて「大静脈症候群」とも呼ばれ、心臓に戻る血流を塞いでしまい、直ぐに手術をしないと命に関わる状態です。
しかし、フィラリア症のわんちゃん全てが末期の症状まで至るとは限りませんが、
最悪の場合は命に関わる病気なので注意が必要です。
<原因>
フィラリア症は「フィラリア」寄生虫に感染した蚊に刺されることで感染します。
フィラリア症のわんちゃんから、他のわんちゃんに移る心配はありません。
蚊は、室外・室内に関係なく居てるので、室内飼いで外には出ないからと安心してはいけません。
<病院での治療>
血液検査でフィラリア症にかかっているかは、すぐに分かります。
フィラリア症にかかっていれば、超音波検査で、心臓付近に寄生している成虫の数を調べ、
少ないようなら、成虫用の駆虫薬を飲ませる方法か、幼虫用の駆虫薬を飲ませて幼虫を
駆除しながら成虫の寿命が尽きるのを待つかの内科的治療になります。
大量に成虫が寄生している場合は、手術で虫を取り出す外科的治療になります。
フィラリア症は、月一回の「フィラリア感染予防薬」を飲む事によって予防できます。
予防薬は、蚊が活動し始める時期から居なくなった1ヶ月後までですが、地域によって蚊の
活動時期が異なるため、獣医さんに予防期間について尋ねてみましょう。
予防薬には飲み薬・注射・滴下剤の3種類あります。
注射に関しては、一回の注射で、半年から一年は効果があります。
注射以外の予防薬は必ず毎月1回の投薬を忘れないようにしましょう。
きちんと予防していればフィラリア症は心配する必要はなくなります。
拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)
拡張型心筋症とは、心臓の筋肉の収縮力が低下して、血液を全身に送る力が弱まり
4つの心室が拡張してしまう状態のことです。
心筋症にはいくつか種類がありますが、わんちゃんに多い心筋症は「拡張型心筋症」です。
拡張型心筋症は大型犬の男の子に多いとされています。
<症状>
拡張型心筋症は初期症状はほとんど無いため、進行が進んでから気づかれることが多いです。
進行が進むと、疲れやすくなり走ることや運動を嫌がったり、食欲低下になり、次第に元気もなくなってきます。そして、咳も出てきます。
さらに進行が進むと、呼吸困難や腹水や胸水が溜まり、チアノーゼ(舌の色が紫色になる)といった症状が出てきます。
重症の場合、失神や不整脈といった症状が出て命に関わる場合もあります。
<原因>
はっきりとした原因は解明されていませんが、遺伝性の要因が原因と言われていますが、
栄養素の不足(タウリン・L-カルニチン)が原因とも疑われています。
<病院での治療>
主に「強心薬」・「血管拡張薬」・「利尿剤」での内科的治療になります。
不整脈が疑われる場合は、「ホルター心電図」という装置をわんちゃんの身体に付けて
不整脈が起こっていないか24時間調べる検査もあります。
また、栄養素(タウリン・L-カルニチン)が不足している場合は、サプリメントを使用し改善を促します。
呼吸困難が起きている場合は、酸素室での入院が必要な場合もあります。
拡張型心筋症の治療は、根本的な病気の治療ではなく、進行を遅らせる為の治療です。
そのため、投薬はずっと続けていかなければなりません。
治療が遅れてしまうと、命の危険もあり得る病気なので、早期に発見し、状態に合わせた治療を
続けていくことで、わんちゃんが少しでも永く快適に過ごせるようにしてあげましょう。
動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)
動脈管開存症とは、わんちゃんによく見られる先天性の心疾患です。
本来なら生後まもなく閉じるはずの動脈管が閉じず、心臓に集まって全身に送り出される血液の
流れが異常になる病気です。小型犬の女の子に多いと言われています。
<症状>
初期の場合は、無症状のことが多いです。進行が進めば、咳をしたり、散歩や運動しても
すぐに疲れる、食欲不振、チアノーゼ(舌の色が紫色になる)などの症状が出てきます。
なかには、発育が妨げられ大きくなれない子もいます。
動脈管開存症の心音は特徴的なので、聴診で発見されやすいと言われています。
<原因>
動脈管開存症の原因は先天性のことがほとんどです。
<病院での治療>
動脈管開存症の治療では、内科的治療では完治が難しいとされているため、
基本的には外科的治療が必要になります。
動脈管を糸で結び閉鎖させる手術になります。他にも「心臓カテーテル」を用いて
動脈管を閉塞する方法もあります。
どちらの方法でも良好な治療効果が見込まれます。合併症など起きなければ、
普通と変わらない生活が送れることが多いです。
進行が進んで末期の場合などは手術が出来ない場合もあります。
手術が不適応な場合は、食事療法や投薬での内科的治療になります。
動脈管開存症の外科手術は、早期に受けた方が術後の合併症も少ないと言われていますので、
早期発見・早期治療は最も重要な事です。
まとめ
わんちゃんの心臓病は様々な疾患が存在します。大切なのは、わんちゃんがどの心臓病にかかっているかを見極め、どんな治療が必要かを早期に発見してあげることです。
心臓病は、初期の段階だと、目に見える症状が無いのがほとんどです。
このため、他の病気でもそうですが、定期的な健康診断はとても重要です。
心臓病になると心臓に雑音が聞こえます。心臓の雑音は聴診ですぐに分かります。
ワクチン接種の時など健康診断以外の時でも、聴診や触診などしてもらうようにしましょう。
そして、心臓病の疑いのある症状がみられた場合は一度診察を受けるようにしましょう。
一番わかりやすい心臓病の疑いのある症状は「咳」と「疲れやすくなった」です。
また、内科的治療で投薬が始まると、ほとんどの場合、生涯飲み続けなければなりません。
生涯、薬を飲み続けるのは可哀想だから・・と、あえて治療を選択しない飼い主さんもいるそうです。
しかし、進行が進み症状が悪化すると、最終的にはわんちゃんは苦しむことになります。
お薬を飲み続けることによって、症状を緩和しつつ、生活の質を保ちながら、わんちゃんが
快適に過ごせる事が、飼い主さんやわんちゃんにとって、とても大切な事だと私は思います。
わんちゃんが、大好きな飼い主さんと少しでも永く快適に過ごせますように。。。