わんちゃんに多い「子宮蓄膿症」✤✤

子宮蓄膿症とは。。

子宮蓄膿症とは、子宮内膜が腫れて、そこに細菌感染が起こり子宮内に膿が溜まる病気です。

子宮蓄膿症は、避妊手術を行っていない高齢のわんちゃんに多く処置が遅れると命にかかわる怖い病気です。

子宮蓄膿症は、子宮の出口部分が開いている開放性子宮蓄膿症」と子宮の出口部分が閉じている閉鎖性子宮蓄膿症」に分かれます。

「開放性子宮蓄膿症」の場合は、「オリモノ」のような膿が陰部から出てきます。

「閉鎖性子宮蓄膿症」の場合膿が子宮から排泄されること無く溜まっていくので、子宮が膨らんでいき、子宮が破れたりする危険性があります。処置が1~2日でも遅れると命に関わってきます。

子宮蓄膿症の症状

初期の場合無症状が多いです。次第に、よく水を飲んでオシッコの量が増えたり(多飲多尿)頻繁に陰部を気にして舐めたり食欲が低下してきます。

「開放性子宮蓄膿症」の場合は、陰部から膿や血膿が出てきます。そのため、陰部周辺や後ろ足あたりの毛が膿で汚れていたりします。

「閉鎖性子宮蓄膿症」の場合は、膿が排泄されないため、子宮内に溜まった膿によってお腹も膨らんできます。

溜まった膿によって子宮が破れて腹腔に細菌が漏れて「腹膜炎」や「多臓器不全」などをおこすと、最悪の場合、短時間で命を落としてしまう危険もあります。

子宮蓄膿症は、少しでも治療が遅れると命に関わる恐ろしい病気なので、最近よく水を飲むようになったお腹が膨らんできた膿のようなオリモノが出ている、など少しでも、いつもと様子がおかしいと思ったら、迷わず動物病院で診察を受けましょう。

子宮蓄膿症の原因

発情期(生理)を迎えると、妊娠のためのホルモンが分泌されます。その中で排卵後に分泌されるホルモン「黄体ホルモン」というのがあります。「黄体ホルモン」子宮内膜を肥厚させ、受精卵を着床しやすくします。

人間は妊娠が成立しなければ黄体ホルモンの分泌は終了しますが、ワンちゃんの場合約2ヶ月間、黄体ホルモンは分泌され続け子宮内膜は肥厚したままになります。子宮内膜が肥厚した状態になると、免疫力が低下し、細菌感染を起こしやすくなります。

子宮蓄膿症の原因となる細菌「大腸菌」が多く、肛門周辺の菌が膣を経由して子宮に入り細菌感染が起こります。

ちなみに、ネコちゃんは、基本的に交尾しなと排卵が起こりません。ネコちゃん交尾するとかなりの高確率で妊娠するため、黄体ホルモンが分泌されるということがほとんどありません。

そのため、ネコちゃんが子宮蓄膿症になることは少ないと言われていますが、ネコちゃんでも「子宮蓄膿症」になる可能性はあります。

子宮蓄膿症の治療

子宮蓄膿症早急に治療をしないと命に関わる緊急性の疾患です。

子宮蓄膿症と診断されれば、即入院となることがほとんどです。わんちゃんの全身状態を調べて、特に問題なければ即手術をして、「子宮」と「卵巣」を摘出します。

基本的には「避妊手術」と同じですが、子宮蓄膿症の場合わんちゃんの状態の悪さ、子宮や血管がもろくなっていたり膿で子宮がパンパンに張っていて、穴が開いたり破れたりする可能性があるので迅速さが求められ、避妊手術よりもさまざまな危険性があります。

また、発見や治療が遅れて進行してしまっていると、感染した細菌によっては子宮内で毒素を出して血管に血栓を作ってしまったり子宮内の毒素が全身に回ってしまい腎臓などに悪影響を及ぼし「多臓器不全」になったりと、命に関わる危険な状態になる場合もあります。

しかし、早期に発見・治療し、術後もワンちゃんの全身の状態が良ければ、数日の入院で回復します。

科 的 治 療

もし、ワンちゃんの身体の状態が悪かったり高齢で疾患のあるワンちゃんで、手術に耐えられないと判断された場合、内科的治療になります。

内科的治療では、お薬を使って子宮を収縮させて膿の排出を促します。

ただし、この場合は開放性子宮蓄膿症」であることが望ましいとされています。閉鎖性子宮蓄膿症の場合、膿を排出させることが出来ないため、内科的治療が出来ないことがあります。

しかし、内科的治療は、一時的に良くなっても再発したり、治療に時間がかかったり完全な治療が出来ないというデメリットがあります。

子宮蓄膿症の予防法

子宮蓄膿症は若いうちに避妊手術」をすることで予防できます。避妊手術」は子宮蓄膿症だけでなく乳腺腫瘍の予防にもなります。

子宮蓄膿症は命に関わる恐ろしい病気です。出産経験のない高齢のワンちゃんがなりやすいと言われています。高齢になると、手術をするのにもリスクが生じます。妊娠させる予定がないのであれば「避妊手術」を検討することをオススメします。

まとめ

「避妊手術」は可哀想。。と思われる飼い主さんもいると思います。私もそうでした・・

しかし、実際、わんちゃんが「子宮蓄膿症」になってしまって後悔しました。

病気になってつらい思いをするのはワンちゃんです。私の勝手な思い込みで防げるはずの病気を防げなかったのです。高齢になって発症してしまったので、不安でいっぱいでした。

幸い、手術も成功し、無事に元気に退院出来ましたが、先生から「あと、1~2日遅かったら命が危なかったです」と言われたときには、ゾッとして泣きそうでした。そして、ワンちゃんに謝りました・・

もし、出産予定があるワンちゃんや、どうしても避妊手術に抵抗がある、何らかの疾患などで手術が出来ないワンちゃんなら、発情(生理)の時期などをしっかり把握して、発情期(生理)が終わって2~3ヶ月間は、注意してワンちゃんをよく観察してあげましょう。

もし、何らかの症状があれば迷わず動物病院で診察を受けるようにしてください。

何度も言いますが、「子宮蓄膿症」は本当に恐ろしい病気です。1~2日で状況が一変します。

この病気は「様子をみよう・・」で1~2日治療が遅れるだけでも命に関わります。

大切なワンちゃんを護るためにも、普段からのスキンシップの時などにも、ワンちゃんをよく観察し、いつもと様子が少しでも違ったりした場合は、動物病院で診察を受けて些細なことでも獣医師さんに相談するようにしましょう。

わんちゃんとのかけがえのない楽しい時間が長く続きますように・・