猫ちゃんの皮膚の病気❀❀
猫ちゃんの皮膚病には、痒みや炎症、脱毛など様々な症状があり、原因も色々あります。
全身、毛で覆われている猫ちゃんの皮膚病は見つけにくいことや、猫ちゃんは毛づくろいが習慣な為、身体を頻繁に舐めていても異変に気づかれにくい事、また、皮膚病は、命に関わる状態になることが少ないため、見つけても直ぐに動物病院に行かず、「少し様子を見てから。。」と先延ばしにしてしまう飼い主さんも居ます。しかし、皮膚病は放っておくと全身に広がってしまいますし、時には強い痒みを伴うこともあり、猫ちゃんにはストレスになります。なによりも、早期に治療すれば、治療期間も短くなります。
皮膚病と言っても、症状も原因も様々です。。ここでは、猫ちゃんがよく発症する皮膚病をご紹介します。
皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)
皮膚糸状菌症とは、「猫カビ」とも言われ、真菌(カビ)によって引き起こされる皮膚病です。
皮膚糸状菌症は、人間にも感染する病気なので感染を疑う症状が出た場合、早めに動物病院で診察をしてもらうようにしましょう。また、同居動物にも感染してしまうので、感染しないように隔離などの工夫が必要になります。
皮膚糸状菌症の原因・症状
皮膚糸状菌症(猫カビ)は、真菌(しんきん)という「カビ」が猫ちゃんの毛や皮膚などに侵入して増殖し発症する皮膚病です。感染は、「感染した動物から他の動物や人」への感染や、飼い主さんが外で感染した動物を触ったり、菌が付いた物に触れたりして外から何かしらの原因で菌を家に持ち込んで感染してしまう「人から動物」への感染と様々です。
症状としては、皮膚の赤みやフケ、菌が感染した部分の脱毛、痒みです。
痒みは軽い場合が多いですが、時には強い痒みを伴う場合もあります。
脱毛は、初めの頃は皮膚がポツポツとして「できもの」の様な物が見られるだけで分かりにくいですが、次第にかさぶたができて、毛が抜けはじめ、引っ張るだけで簡単に毛の束が抜けて、角質細胞が剥がれ落ちて脱毛します。症状は主に顔や耳、手足によく見られます。
皮膚糸状菌症の検査・診断方法
検査方法としては、360nm波長の紫外線を照射することで、菌が出す物質に反応し感染した部分を青緑色に蛍光発色させる「ウッド灯検査」、感染を疑う部分の毛を抜いて菌を顕微鏡で直接確認する「毛検査」、感染の疑いのある部分の毛を採取し、培養キットに入れ菌の増殖を確認する「真菌培養検査」などがあります
その他にも、細菌検査や寄生虫の検査などをして、原因が真菌かどうかを確認します。
皮膚糸状菌症の治療法
治療には、「抗真菌薬」の内服薬や外用薬(塗り薬)、薬用シャンプーなどになります。
症状が多数または広範囲ある場合は、全身療法の「内服薬」での治療になります。
しかし、治療には数週間~数ヶ月かかることが多く、長期投薬になるため、肝臓などへの副作用がないか定期的に血液検査などをしなければなりません。
症状が一部に留まっていたり、軽い場合は、塗り薬の「外用薬」での治療になります。
また、肝臓疾患や高齢などで「内服薬」の長期投与の副作用の影響を考え、症状が多数または広範囲ある場合でも「外用薬」で治療する場合もあります。
耳疥癬症(みみかいせんしょう)
耳疥癬症は「耳ダニ」とも言われ、猫ちゃんの耳の中に「耳ヒゼンダニ」というダニが寄生して感染する疾患です。
耳ダニは、人間には感染することはありませんが、同居している猫ちゃん・わんちゃんなど他のペットには感染します。
耳ダニの症状があれば、同居している他の猫ちゃん・わんちゃんとの隔離は必要になってきます。
耳疥癬症(耳ダニ)の原因・症状
耳ダニは感染力が強く、主な原因は感染した「動物から動物」です。子猫の場合、親猫が耳ダニに感染していたら親猫から感染します。また、多頭飼いで、野良猫を保護して連れて帰った場合、野良猫ちゃんが感染していた場合、先住猫などに感染します。一匹飼いの場合でも、外に自由に行ける場合、外猫から感染して帰ってくることもあります。
私の場合ですが、昔、ペットショップから連れ帰った子なのですが、ペットショップの管理体制がずさんだった為か、すでに耳ダニに感染していて先住猫に感染した経験があります。
耳ダニの症状は、黒い耳垢が沢山出てきます。耳の穴も目に見えて垢で黒くなっています。そして、強い痒みを伴う為、頭を振ったり、しきりに耳を掻いて、耳の穴や周辺が傷つき、出血している場合もあります。
放置してしまうと、中耳炎や外耳炎などを発症してしまう場合もあります。また、強い痒みや痛みからストレスが溜まったり、食欲や元気がなくなったりする場合もあります。
このような症状が見られた場合、猫ちゃんの為にも迷わず動物病院で診察してもらいましょう。
早期に治療すれば治療期間も短くなります。
耳疥癬症(耳ダニ)の検査・診断方法
耳ダニの検査は、耳の中を耳鏡で直接確認したり、耳垢を採取して、顕微鏡で確認します。
耳ヒゼンダニの卵や成虫が確認されれば「耳疥癬症(耳ダニ)」と確定されます。
耳疥癬症(耳ダニ)の治療法
耳ダニの治療はまず、耳垢を綺麗に取り除き洗浄します。そして、駆除作用のある「点耳薬」や「皮膚滴下タイプ」の全身ダニ駆除薬のなどで治療します。
耳をかきむしって傷などがある場合は「抗生物質」を用いる事もあります。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎とは、猫ちゃんの身体に寄生したノミの吸血の際の唾液が原因でアレルギー反応が起こり発症するアレルギー性皮膚炎です。
ノミアレルギー性皮膚炎の原因・症状
猫ちゃんには、「ネコノミ」というノミが寄生します。ネコノミが寄生して吸血する際の唾液によってアレルギー性皮膚炎は起こりますが、猫ちゃんの体質によってはアレルギー反応を起こさない子もいますが、1~2匹のネコノミでもアレルギー反応を起こす子もいます。また、症状も個体差によって様々です。
症状は主に、首~背中・お尻にかけ赤いブツブツ(発疹)が出てきます。赤く腫れ上がったり、かさぶたが出来たり、脱毛する子もいます。そして、強い痒みがあるため、しきりに掻いて爪により傷が出来て出血などして、さらに悪化する場合もあります。
ノミアレルギー性皮膚炎の治療法
ノミアレルギー性皮膚炎の治療は、まず「ノミ駆除・予防薬」でノミの駆除をします。同時にアレルギーや炎症を抑える治療もしていきます。ノミ駆除・予防薬は首に垂らすスポットタイプがあります。
また、飼育環境の「ノミ駆除」なども大切です。駆除剤などを使い、いつも使っているベットや、毛布、マットなどを清潔にして、ノミの繁殖を防ぎます。また、外に自由に行ける子は再びノミが寄生する可能性があるため、完全室内飼いにするなど生活環境の見直しが必要です。そして何より、「ノミ駆除・予防薬」は定期的にすると安心です。
これと同時にアレルギー炎症の治療も行います。
治療には、症状によりますが、「ステロイド剤」や「抗生物質」などを内服する場合があります。
心因性脱毛症
心因性脱毛症とは、猫ちゃんがストレスによって引き起こしてしまう皮膚疾患です。
猫ちゃんはストレスを感じると、身体を舐めて不安などを和らげようとします。軽いものなら直ぐに治まり心配は無いのですが、精神的に強いストレスなどによって、過剰にグルーミングをしたり、毛を噛みちぎったりしてしまいます。このことによって、毛が薄くなったり、脱毛してしまうのが「心因性脱毛患」です。
心因性脱毛症の原因・症状
猫ちゃんには、警戒心が高く、神経質で、とても繊細な子が多いです。ストレスは猫ちゃんの性格などにもよりますが、怖がりな子や臆病な子などは注意が必要です。少しの物音、近所の工事や車などの音、子供の遊びの声、走る足音など、些細なことでもストレスを感じる子は居ます。
この他にも、生活環境の変化、寝床やご飯場・トイレなどの場所移動、同居ペットが増えるなどもストレスの原因になります。もちろん、少しの不快感のみで、それほど強いストレスを感じない子もいます。
猫ちゃんが明らかに普段以上にグルーミングをしたり、毛を噛み切っていたら注意が必要です。
心因性脱毛症は、前足やお腹など身体の一部を過剰に舐め続け脱毛します。大体の場合、皮膚には異常はありませんが、中には外傷性皮膚炎を発症してしまう場合もあります。
心因性脱毛症の検査・診断
診断にはまず、寄生虫やアレルギーの疾患でも脱毛の症状はあるため、他の疾患の可能性がないか調べます。
他の疾患が除外され、ストレスが原因と判断されれば、環境の変化などが無いか、どんなときに過剰にグルーミングするかなどを、よく観察してストレスの原因の改善や対策などを獣医師さんとよく話し合います。
心因性脱毛症の治療法
治療には根気と時間が必要になることが多いです。
猫ちゃんのストレスの原因に心あたりがある場合は、それを改善していく「行動療法」になります。時間がかかっても、少しずつ猫ちゃんのストレスを軽減できるように工夫が必要です。
ストレスの原因が分からない場合や、改善するのが難しい場合は、猫ちゃんの症状にもよりますが、「薬物療法」になる場合もあります。
また、常に身体を舐め続けていて、皮膚を傷つけ、外傷性皮膚炎などを発症する恐れがある場合などは「エリザベスカラー」を使用する場合もあります。
マラセチア皮膚炎
マラセチア皮膚炎とは、「マラセチア」という真菌(カビ)が増殖してしまい皮膚炎や外耳炎を起こしてしまう疾患です。
「マラセチア」とは酵母様真菌に分類されるカビの仲間です。
マラセチアは健康な猫ちゃんの皮膚にも存在します。普段なら身体に害を与えることはありませんが、
体調不良による免疫の低下、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、内分泌疾患など様々な他の基礎疾患などが原因でマラセチアが増殖してしまい皮膚炎や外耳炎などを発症してしまいます。
マラセチア皮膚炎の原因・症状
マラセチアが増殖する原因はいくつかあります。マラセチア症は他の動物からの感染はなく、普段、身体に存在しているマラセチアが何らかの原因によって増殖してしまうことで発症します。
主に体質的に皮膚バリア機能が弱い子や、アレルギー性皮膚炎や耳ダニなどの基礎疾患から二次的に発症している場合が多いです。
マラセチアが増殖し、皮膚炎や外耳炎を発症させてしまうと、「痒み」を伴います。しきりに身体などを掻いて炎症を起こしたり、皮膚が分厚くなったりしてきます。
耳の中でマラセチアが増殖した場合は、「痒み」と共に「耳垢」も増えます。
この他、「フケ」や「皮膚がベタベタしている」「脱毛」などの症状がみられます。
マラセチア皮膚炎の検査・診断
マラセチア症の検査は動物病院で、問診、耳垢や皮膚の細胞を顕微鏡で確認してマラセチアの有無を調べます。
その他、マラセチア皮膚炎の背景に基礎疾患が疑われる場合、血液検査など必要に応じて検査する場合もあります。
マラセチア皮膚炎の治療法
マラセチア皮膚炎の治療は、週2~3回、抗真菌作用のある薬用シャンプーをすると同時に、抗真菌薬の内服や外用薬の塗布で、増殖したマラセチアを減少させて過剰分泌した皮脂分を抑えます。
その他、耳に症状が出ている場合は抗真菌薬の点耳薬を使用します。
この他、基礎疾患がある場合は、その症状に合わせた治療も行います。
疥癬症(かいせんしょう)
猫ちゃんの疥癬症は、「猫小穿孔(ねこしょうせんこう)ヒゼンダニ」というダニの仲間が寄生して発症する皮膚病です。
*「猫小穿孔ヒゼンダニ」は、「耳疥癬症」の「耳ヒゼンダニ」とは別のダニになります。
疥癬症は、感染力が強く、激しい痒みを伴う皮膚病です。また、人間にも感染する「人獣共通感染症」であるため注意が必要です。
疥癬症の原因・症状
疥癬症の原因は「猫小穿孔ヒゼンダニ」が寄生することによって引き起こされます。
感染する原因のほとんどの場合、感染した猫ちゃんからの接触感染が多いです。
外に出る習慣のある猫ちゃんは特に注意が必要です。
しかし、完全室内飼いの猫ちゃんも外に出ないからと安心は出来ません。
網戸越しなどで、感染した野良猫と接触した場合でも感染してしまう場合もあります。
また、母猫が疥癬に感染していると仔猫も感染してしまうので注意が必要になります。
飼い主さんが外で感染した猫ちゃんなどを触ったり、抱っこしたりして、家にダニを持ち帰り感染してしまう可能性もあります。
疥癬症は、人間やワンちゃんにも感染が認められる感染症です。
希にわんちゃんの疥癬の原因である「犬センコウヒゼンダニ」が猫ちゃんに感染してしまう場合もあります。
疥癬症は主に頭・顔・耳に発症することが多く、かさぶたが出来ていたり、フケ、発疹がみられます。
そして、疥癬症は激しい痒みを伴うため、非常に痒がり、血が出るまで掻きむしる場合もあります。
進行すると、脱毛や皮膚が分厚くなってシワシワになり、その中にフケが溜まっていき、若い猫ちゃんでも歳をとった猫ちゃんのように見えてきます。また、仔猫や抵抗力の弱い猫ちゃんの場合、全身に広がる場合もあります。
疥癬症の検査・診断
疥癬症の検査は、皮膚の表面やフケを採取して顕微鏡で確認します。ヒゼンダニの成虫や卵、他の寄生虫の有無などを調べます。しかし、疥癬の皮膚検査の検出率は100%ではなく、約20~50%程とも言われています。
皮膚検査でヒゼンダニが確認されなくても疥癬症の否定は出来ないため、獣医師さんと十分に話し合いましょう。
もし、他の感染症や疾患が原因が疑われた場合、それに応じた検査をします。
疥癬症の治療法
疥癬症の治療は、「抗疥癬薬」の内服薬や注射、首元に滴下するスポットオンタイプの駆除薬などで治療します。また、補助的な治療として、薬用シャンプーでの浴薬を同時に行う場合もあります。
また、痒みがひどく掻傷がある場合は治療の間、エリザベスカラーをする場合もあります。
また、傷口から細菌感染が起こっている場合は「抗生物質」を使用して治療します。
疥癬症は感染力も強く、一匹が感染すると他の子にもスグに広がります。
多頭飼いの場合、一匹が感染してしまったら他の子の発症の有無にかかわらず感染していないか検査をし、全員の予防薬投与をしましょう。
また、外に自由に行き来できる環境の場合、再感染防止の為、完全室内飼いにするなどの改善が必要になります。完全室内飼いでも、網戸越しなどで、感染した野良猫と接触すると感染の可能性もありますので注意が必要です。
飼い主さんも、外で野良猫などと触れ合った場合はヒセンダニを持ち帰ってしまう可能性がありますので、感染している可能性のある野良猫と触れ合った際は、帰宅後、スグに着ていた服の洗濯、シャワーを浴びるなどしてダニの持ち込みを防止しましょう。
そして、何よりも普段から定期的なノミ・ダニ駆除薬の投与は予防にも繋がりますので、とても大切な事です。
完全室内飼いでも、飼い主さんが外から持ち帰ってしまう可能性はゼロでは無いため予防は必要です。
まとめ
皮膚病には様々な症状があります。命に関わる程の重症化は少ないですが、ほとんどの皮膚病の症状にある「痒み」。。痒みは猫ちゃんにとって、とてもストレスが溜まる症状です。血がでるまで掻きむしってしまうと、その傷から細菌が入り二次感染がおきる可能性もあります。痒みや痛みで苦しんでる猫ちゃんを見るのは飼い主さんにとっても、とても悲しいことです。
ノミやダニが原因の皮膚病の場合は、ノミ・ダニ駆除薬を定期的に投与することで予防出来ます。
また、不衛生な環境もダニの繁殖に繋がります。猫ちゃんの寝床などは清潔にしてあげましょう。
皮膚病の症状によっては見過ごされる事があり、異変に気づいたときには進行していた。。ということがあります。日頃からスキンシップやブラッシングをしてあげると、皮膚の変化やフケ・かさぶたの有無など、ちょっとした変化にも気付けて、早期発見・早期治療に繋がります。